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ドイツは「太陽光発電戦略」に基づき導⼊拡⼤が急進展

2025.11.07

欧州連合(EU)では、2025年6月に太陽光発電が総発電容量の22.1%を占め、初めて 最も発電量が多い電源になった。太陽光発電システムの普及拡大と、晴天が続いたた め、EU加盟国のうち少なくとも13ヶ国で太陽光発電の月間発電量が過去最高を記録し たという。国際エネルギー機関太陽光発電研究開発プログラム(IEA PVPS)によれば、 2024年末時点で電力需要における太陽光発電の寄与率は、スペインにおいて28.9%、オ ランダにおいて21.3%となっており、欧州の一部の地域では既に太陽光発電が主力電源 となっている状況である。

 

2024年末時点での欧州における太陽光発電の累積導入量は343GWdcとなった。EU は、欧州ソーラー・エネルギー戦略(2022年3月)においては2030年の累積導入量を 600GWacと定めている。この目標はdc換算では740GWに相当するために、2025~2030 年の間に約400GWの新規導入が必要とされている。加盟国は各目標の達成に向けた取 り組みを明記する国家エネルギー・気候計画(NECP)に従って太陽光発電の導入を進 めていく見通しであり、建築物エネルギー性能司令(EPBD)による設置義務化の段階 的実施も予定されている。変動電源の導入により、電力市場の改革も必須であるが、EUは2024年5月に電力市場改革を法制化しており、非化石エネルギーの長期契約の促進、 よりクリーンで柔軟なソリューションの導入、市場の透明性向上に取り組み、より強靭 で持続可能なエネルギー市場の創出を目指している。

 

欧州市場を牽引するドイツにおいては、政権交代による気候変動政策の後退も懸念 されたが、2045年までの再エネ導入目標及び太陽光発電の導入目標は堅持された。ドイツでは、太陽光発電戦略(2023年5月)により、太陽光発電累積導入量の目標を策定し ており、2040年までに400GW、2030年までに215GWとする計画である。この達成には入札枠の拡大、営農型、水上設置型、湿原や駐車場など、特殊な場所に設置される太陽 光発電システムへの補助額増額(ボーナス)の適用等の施策を打ち出している。この2 月には、電力価格がマイナスになる時間帯のFITによる価格保証を取りやめる一方で、 スマートメーター導入者及び新制度切り替え者に対する優遇策も提供され、送電網の 過負荷を回避し、エネルギーシステムの安全性を確保する施策が打ち出された。また、 変動電源の拡大に備えて調整力としてのガス火力の拡大も決定された。

 

なお、EUでは、気候変動対策に加えて、地政学的な状況から域内産業の競争力にも取り組み始めている。ネットゼロ産業法(NZIA)により、太陽電池モジュールなど、 温室効果ガス排出量ネットゼロに寄与する製品の需要の40%を域内製品で賄うことが求められ、太陽光発電関連製品の安定供給及び発電設備のセキュリティに向けた取り 組みを強化していく方針である。

 

欧州においても系統制約や地域共生、立地制約等の課題は顕在化しているが、野心的な太陽光発電の導入目標達成に向けて、今後も様々な施策が展開されていく見通しで ある。

 

我が国においては、第7次エネルギー基本計画が本年2月に策定され、太陽光発電 は2040年の発電容量及び発電量において、トップ電源に位置付けられている。しかしながら、2024年の年間導入量は6GW台から5GW台に減少している。

 

EU及びドイツは表1 に示すように、太陽光発電の導入目標の策定のみならず、その方策を示した「戦略」を 打ち出し、導入拡大が再び大きく進展している。特にドイツは、「太陽光発電戦略」で 2026年までに2022年の3倍となる22GWへと拡大し、それ以後は22GWを維持する計画である。年間22GWの内訳として、地上設置と屋根設置を同量の11GWと定めている。こ の結果、年間導入量は7GWレベルから15GWレベルへと倍増し、2024年には17.2GWま で拡大している。

 

我が国も2040年目標への達成に向けて官民一体となって、第7次エネ ルギー基本計画で設定した導入目標量に対する市場別の導入目標量の設定と実現への 施策や工程を具体化させ、供給サイドと需要サイドが共に投資と導入拡大に向かえる、 太陽光発電に特化した「自立・発展戦略」の策定が望まれる。同時に、社会受容性を高 めていくためにも太陽光発電業界は、現在関係省庁連絡会議が議論している太陽光発 電事業への地域共生及び規律強化に向けた方針に沿って、「事業規律と地域共生」の徹 底を図っていかねばならない。

 

 

表1 欧州連合及びドイツの太陽光発電

PV in EU

*(株)資源総合システム推計値

 

       

 

 

「今月の視点」の英語版”RTS Monthly Perspective”は、こちらからご覧いただけます (英語版は日本語版の1~2週間後に反映されます)

The English version “RTS Monthly Perspective” can be found here. (English version will be released1~2weeks after the Japanese version)

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