この11月に国際エネルギー機関（IEA）は、エネルギーの将来展望を示す報告書「World Energy Outlook 2025（WEO2025）」を発刊した。同報告書では、太陽光発電は世界のエ ネルギー転換において極めて重要な役割を担うと位置づけられており、その導入は急速に進むと見通されている。
WEO2025によれば、2024年に世界の電力需要は、長期的平均伸び率1.4%（2010～2023 年）を大きく上回る2%であったが、この伸びの大半は、太陽光発電と風力により賄われたという。今後も世界の電力需要は、気候変動による冷暖房の需要増、AI用データセ ンターの増加等により今後も継続して増加することが予測されているが、電力需要の伸びの大半は、太陽光発電と風力発電によって賄われると分析している。
IEAは、WEO2025に先がけて7月に発刊した「Electricity Mid-Year Update 2025」において、総発電量において再生可能エネルギーは早ければ2025年、遅くとも2026年に石炭 火力発電を抜いて世界最大の電源になると予測していた。実際に、2025年上期には、世 界の再生可能エネルギー発電量は2025年上期に初めて石炭火力発電を上回ったと報告されている。英・Emberの分析によれば、同期の再生可能エネルギーによる発電量は 5,072TWhで総発電量の34.3%を占めた。一方、石炭火力発電の発電量は4,896TWhでシ ェアは33.1%であったという。同期に世界の電力需要は369TWh増加したが、太陽光発 電の発電量増加（306TWh）、風力発電の発電量増加（97TWh）により需要の増加分は充分に満たされた。こうした状況に鑑みると、今後もエネルギー需要の拡大に太陽光発電が大きく貢献していくことが見込まれている。
WEO2025においては、表1に示すように3つのシナリオに基づいた太陽光発電の導入 見通しが提示されている。
表1 WEO2025における世界の太陽光発電の累積導入量
出典：国際エネルギー機関（IEA）、「World Energy Outlook（WEO）2025」（2025年10 月）から資源総合システムが作成
WEO2025によるSTEPSシナリオの太陽光発電システムの導入見通しは、2024昨年版のWEOからやや引き下げられている。これは米国のパリ協定再離脱や、脱炭素政策で 原子力発電に再び注力する国が増加したことなどによる。図1に示すように再生可能エ ネルギーの割合は増加し、太陽光発電は中心的な存在になっている前年と変わらない分析結果である。
図1 シナリオ別発電容量の見通し（シナリオ略号については前掲）
出典：国際エネルギー機関（IEA）、「World Energy Outlook（WEO）2025」（2025年10 月）から資源総合システムが作成
この9月にIEA及び国際再生可能エネルギー機関（IRENA）と欧州委員会（EC）が発 表した共同書簡においては、世界はかつてない速さでクリーンエネルギーへの移行を進めており、2024年には電力部門におけるクリーンエネルギーの投資額は化石燃料へ の投資額の10倍に達したという。この背景には気候変動という存亡の危機、エネルギー 安全保障＝国家安全保障であるという共通認識、クリーンエネルギーが安全保障と成 長を実現する道であるという共通認識があって、再生可能エネルギーの導入拡大が加速されている。
このように、世界ではエネルギーの安定供給及び脱炭素化に向けて既存電源に対して競争力を確保した太陽光発電を必須とし、主軸の主力電源として導入拡大が進めら れている。
わが国においても、第7次エネルギー基本計画において2040年導入目標として、わが 国最大電源となる200～300GW規模の導入が設定され、この実現に向けて経済性、変動 電源性、系統制約、立地制約、地域共生、サプライチェーン構築、再エネ適地・不適地 ゾーニング、使用済み太陽光パネル対応などの導入拡大を阻む社会的・経済的課題克服 への対応が進められている。こうした普及への環境整備に加えて、官民総力を挙げた年 間10GW規模の導入量の拡大に向けた政策的対応と事業展開の抜本的強化にも同時に取り組み、「太陽光発電の自立」の加速化へ重点を移していかねばならない。
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