2023年度の再生可能エネルギー導入拡大に対する各省からの予算要求額が明らかとなった。第6次エネルギー基本計画及び地球温暖化対策計画に基づく、2030年の再生可能エネルギー導入目標の達成に向けて、関係省庁による再エネ導入に関する予算要求は本格化している。これまで再生可能エネルギーの導入は大半が旧FIT制度に基づく導入であったので、関係省庁による導入予算は限定的であった。しかし、「エネルギー供給強靱化法」及び「改正地球温暖化対策法」が施行され、また経済財政運営と改革の基本方針2022(骨太方針2022)の中で、脱炭素効果の高い電源の最大限活用というエネルギー安全保障強化が示されたこともあり、再生可能エネルギー導入予算が拡大している。
とりわけ環境省は、再生可能エネルギーに対して最優先・最大限の導入拡大を掲げており、表1に示すように再エネ導入に関して倍増以上の大幅増額を要求している。太陽光発電については、分散型電源として全国津々浦々に導入でき、脱炭素とエネルギー地産地消への中心的な電源となることから、自治体を通じた導入拡大に力を注いでいる。民間企業に対しても、自家消費型太陽光発電の普及を目指し、産業施設だけでなく駐車場、営農型、ため池、廃棄物処理場など、導入分野を広げてPPA方式によるオンサイト型太陽光発電の導入拡大を進めていく。途上国に対しても、CO2削減に貢献する二国間クレジット制度(JCM)促進への予算を拡げ、途上国への太陽光発電導入拡大を進めていく。さらに、環境省は脱炭素事業に意欲的に取り組む民間企業を集中的、重点的に支援するファンドとなる、脱炭素支援機構を通じた財政投融資も倍増している。
経済産業省は、FIT/FIP制度での導入拡大を継続して進めるとともに、FIT/FIP制度に頼らない導入に対しては補助金を設けて電力需要家主導による導入拡大を広げていく。さらに、再エネの導入拡大が進むための環境整備面から、系統用蓄電池支援、再エネ発電等のアグリゲーション実証支援、太陽光発電導入拡大に向けた技術開発支援も強化している。
この他の省庁でも、国土交通省は公共インフラ施設への再エネ導入、住宅・建築物の省エネ対策強化など、文部科学省は学校施設のZEB化など、農林水産省はみどりの食料システム戦略の推進の中での再エネ導入など、脱炭素に向けた予算を計上している。
こうした関係省庁からの再エネ導入拡大への予算要求の増額により、2023年度の我が国の導入量は、未稼働案件の稼働とFIT/FIP制度での導入に加えて、関係省庁の補助金による新規導入が基本となろう。この中で、未稼働案件は毎年確実に減少し、FIT/FIP制度での導入は今後限定的となると考えられるが、環境省による導入補助金は脱炭素先行地域と重点対策加速化事業の拡大とともに継続・強化が見込まれており、今後、地方自治体を通じた促進区域形成と導入展開が益々重要となってくる。同時に太陽光発電にとっては住宅、民間施設、公共施設、公有地、農地、ため池水面などを利用した発電所などの市場形成を地域単位に図ることができ、地域に根差した事業展開が可能となる。太陽光発電産業は、導入のみに焦点を合わせるのではなく、地方自治体及び地元企業群と連携して、地域単位での新規導入、メンテナンス、発電サービスを束ねた、地域一括型の太陽光発電事業展開を進め、再エネを活用した地域の再開発や新たな地域経済の発展に貢献していくべきであろう。
表1 環境省及び経済産業省による太陽光発電及び蓄電池に関する主な導入補助事業