「第6次エネルギー基本計画」、「グリーン成長戦略」、「地球温暖化対策計画」を束 ね、さらにGX投資の推進と世界情勢を加味するなど発展的な形で「GX実行に向けた基 本方針」が閣議決定された。これまでの経済成長と脱炭素社会形成に、エネルギーの安 定供給確保が加わり、今後の10年を見据えたロードマップが示された。政府はこの実現 に向けて20兆円規模の「GX経済移行債」を発行し、官民合わせて150兆円超の脱炭素化 投資を進めていくこととなった。
GXに向けた取り組みの成否が企業・国家の競争力に直結する時代に突入したことや、 ロシアによるウクライナ侵攻によって、わが国のエネルギー安全保障の重要性が再認識 されたことを背景に、政府はGX対応の加速がエネルギー安定供給と脱炭素分野で新た な需要・市場を創出し、日本経済の産業競争力強化・経済成長につなげていくという立 場に立って、基本方針を決定している。同方針は、エネルギー安定供給の確保を大前提 としたGXの取り組みと、「成長志向型カーボンプライシング構想」等の実現・実行が 柱となっている。前者では、①徹底した省エネの推進、②再エネの主力電源化、③原子 力の活用、④その他11の重要事項からなり、再エネと原子力の最大限活用が明記されて いる。その他11の重要事項には、再エネの導入拡大を左右する「電力・ガス市場の整備」 や「蓄電池産業」、太陽光発電の利活用を広げる「鉄道」、「脱炭素目的のデジタル投 資」、「住宅・建築物」、「インフラ」、「食料・農林水産業」が含まれる。
省エネの推進では、改正省エネ法に基づき規制・支援一体型で非化石エネルギーへの 転換に取り組み、省エネ補助金を創設する。再エネの主力電源化では、第6次エネルギ ー基本計画に基づき、関係省庁・機関が密接に連携しながら、2030年度の再エネ電源比 率36~38%の確実な達成を目指すとし、導入目標量は“野心的”から“必達”に変わろ うとしている。太陽光発電に対しては、直ちに取り組む対応として、公共施設、住宅、 工場・倉庫、空港、鉄道などへの設置拡大を進めるだけでなく、温対法を活用しながら 地域主導の太陽光発電導入を進め、さらに、FIP制度による導入だけでなく、同制度に 頼らない導入モデルの拡大も進めていく。中長期的には、系統整備及び出力変動への対 応も加速するため、全国規模での系統整備や定置用蓄電池を活用した調整力の確保、ペ ロブスカイト等のGW規模の次世代型太陽電池の量産化による技術自給率の向上、地域 共生に向けた事業規律の確保、既設太陽光発電の最大限活用、将来の太陽光パネルの大 量廃棄への計画的対応など、今後の10年間への対応を示し、そのために必要な官民投資 額が20兆円超になると想定している。このように、太陽光発電は同方針の中で、大きな 役割を担っている。
今後、わが国の太陽光発電導入展開は、「GX実現に向けた基本方針」に基づき、関係 省庁及び自治体がエネルギーセキュリティの面からも、総力を挙げた取り組みへと発展 していくことになろう。
一方太陽光発電産業は、これまで新規導入に主眼を置いてきたが、これからは2030年 120GWの導入実現に向けて、「導入の追求」、「保守・管理の追求」、「PV電力サービ スの追求」という3つの軸からなる発展段階に移行する。「導入の追求」は、これから 新設する60GWに対して、これまでの延長ではあるが、高度化が求められる分野である。 「保守・管理の追求」は既設の60GW分と新設される60GW分の長期安定稼働を維持する 分野で、これまで培ってきた技術・知見をベースに本格的な成長が見込まれる。「PV電 力サービスの追求」は、2030年までに年間1500億kWhのPV電力を安定供給する分野で、 PV電力サービスやアグリゲーションを行う事業者群の形成など、これからの急成長が 見込める創生分野である。こうした3軸をベースとした太陽光発電産業の発展・強化(= PVX)なくして2030年の導入目標量120GWの達成はできない。
世界では、太陽光発電をめぐる政策展開・導入展開・産業展開が急速に進んでおり、 日本も例えば図1に示すような、太陽光発電の目指すべきゴールを設定して、官民によ る太陽光発電産業発展(PVX)像を描き、年間での導入量の確保と産業基盤の強化を図 ることが急務である。太陽光発電産業は次世代エネルギー産業に向かうPVXとして、年 間1500億kWhの電力の安定供給を担える自立した産業への発展が求められており、GX 実現を支える原動力である。