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株式会社 資源総合システム

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GX実現に向けて太陽光発電産業基盤の強化を

2023.04.07

2022年度が終了する。2022年4月に「エネルギー供給強靱化法」及び「改正地球温暖化対策推進法」が施行され、太陽光発電にとって次の段階に進む普及環境が整えられた。2022年度は、「第6次エネルギー基本計画」及び「地球温暖化対策計画」の実現とエネルギーセキュリティ確保に向けた新たな展開を始める1年であった。

 

政府は「GX実現に向けた基本方針」を定め、エネルギー安定供給確保を大前提としたGXの取組みを示した。この中で再エネの主力電源化では2030年の電源比率36~38%の確実な達成が明示され、野心的とされた目標は必達目標となった。太陽光発電に関しては、公共施設、住宅、工場・倉庫、空港、鉄道などへの設置拡大だけでなく、温対法を活用しながら地域主導の太陽光発電導入を進めることとなり、さらに、FIP制度に頼らないスキームによる導入の拡大も進められることとなった。経済産業省では、再エネ発電事業者に対する適切な導入と管理を課す事業規律制度をとりまとめ、再エネ導入の地域共生を図るための法整備を行うこととなった。「認定失効制度」「廃棄費積立制度」などの新たな制度を開始し、さらに既設再エネの最大活用に向けた出力増加や長期運転に向けたルールの見直し、FIT買取価格の12円/kWhへ引き上げによる屋根設置型太陽光発電の導入促進、再エネ導入を促進する省エネ法の改正など、今後の導入拡大につながる普及環境整備を進めた。環境省では、脱炭素移行・再エネ推進交付金を創設し、脱炭素先行地域づくり事業や重点対策加速事業による太陽光発電の地域集中導入を開始するとともに、PPA方式を活用した民間施設への自家消費型太陽光発電の導入と、公共施設への自立分散型太陽光発電の導入を加速させた。国土交通省では、住宅への省エネ基準適合を義務付ける「改正建築物省エネ法」を成立させるとともに、公共インフラ施設への太陽光発電導入を道路・鉄道施設にも広げていくことになった。自治体も環境省に連動して再エネの導入拡大に乗り出し、特に、東京都と川崎市は新築住宅への太陽光発電の導入を義務化した。このような政府・自治体による太陽光発電導入拡大に向けた施策展開は、今後も継続していくと見込まれる。

 

一方、国民、企業、政府・自治体等の電力需要家群もPPA方式の活用などで、再エネ電力転換を始めており、さらに、金融セクターも脱炭素社会形成に向けて再エネ導入につながる事業の強化に動いている。こうしたことを踏まえると、太陽光発電産業は今後の自立的発展に向けて歓迎すべき事業環境変化が起きていると捉えることができる。

 

しかしながら、太陽光発電のさらなる発展には、導入適地の減少、出力制御の全国への拡大、サプライチェーンの分断等が懸念されており、太陽光発電産業にとっては表1に示すように、①太陽光発電システムの安定調達(量及び価格+人権問題)、②蓄電池を初めとする電力貯蔵技術のコストダウン、③系統制約解消への限界、④立地制約解消に向けた政策展開・規制緩和のスピード、⑤太陽光発電技術開発の継続性、⑥太陽光発電の社会受容性の確保など事業展開へのリスク低減を図る必要がある。太陽電池パネルやパワーコンディショナなどの太陽光発電システムコンポーネントの海外依存度が年々高まっており、太陽光発電産業界にとっては、価格競争力を持ったシステムコンポーネントの安定調達を図る方策が必要となろう。さらに、太陽光発電導入が大規模に進んだ今日においては、太陽光発電と蓄電池等の電力貯蔵のカップリングが求められており、蓄電池の早期の低価格化も不可避の課題になっている。系統制約や立地制約の解消に向けての政策的対応も早めていかねばならない。太陽電池の国内生産の撤退により、太陽電池技術者の減少も進み始めており、太陽光発電システムの高度化に向けていかに技術開発力を維持していくか、技術開発の継続性も求められている。

 

このような今後の太陽光発電の普及を左右する課題は、太陽光発電産業界だけで解決できるものではない。2030年120GW規模の導入と運用を担う太陽光発電産業が発展していくためにも、政府を含め関連する機関・業界との連携を深めながら、これらに対応していくことが重要となる。世界では太陽光発電をめぐる政策展開、導入展開、産業展開が具体的な計画として進んでおり、日本も遅れを取ることなく、2050年カーボンニュートラルを見据えた太陽光発電の目指すべきゴールを設定した「太陽光発電産業戦略」を策定し、官民で共有する必要があるのではなかろうか。産業基盤の強化と一定レベルの持続可能な市場確立を図ることが急務である。太陽光発電産業は、2030年には年間1500億kWhの電力の安定供給を担える自立した次世代エネルギー産業への発展が求められており、GX実現を先導する原動力とならねばならない。

 

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