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太陽電池技術の進化と多様化が加速、技術開発と産業は次の展開へ

2023.05.10

結晶シリコン太陽電池をはじめとし、太陽電池技術の進化と多様化が加速している。 2023年3月に開催されたPV EXPO 2023は、あらゆる場面・ニーズに対応する太陽電池製 品が登場するなど、太陽電池新時代への移行が感じられる展示会となった。第一世代の 主役であった多結晶シリコン太陽電池に代わる第二世代のP型単結晶(PERC)セルが主 流を占める中、N型単結晶(TOPCon、ヘテロ接合(HJT)、バックコンタクト(xBC)) の第三世代の幕開けとともに、ペロブスカイトやタンデム型を代表とする次世代太陽電 池の“のろし”が上がり始めている。

 

結晶シリコン太陽電池では、単結晶品の市場シェアは2015年の19%から2022年には 90%超まで急拡大した。今後10年で、太陽電池の素子構造の主流技術はPERCから TOPConへ移行し、HJT、xBC、タンデム型も含めた新たなセル技術のシェアは現在の約 20%から約90%まで拡大すると予測されている。PV EXPO出展メーカーの大半が、 182mm・210mm角の大型ウエハーと高変換効率セル技術を用いた、600~700W超の高出 力太陽電池モジュールを展示した。発電性能向上やシステムコスト低減により、発電コ ストの更なる低減が期待できる。また、導入側のニーズに焦点を当てた都市部での狭小・ 複雑形状屋根向けの小型モジュールや、建材一体型(BIPV)、出力低下を抑えたカラー・ デザイン加飾、超軽量薄型セミフレキシブルモジュールなど用途に配慮した多様な製品 も提案された。

 

世界では、太陽光発電構成部品のサプライチェーンが限定された国や地域に過度に依 存していることへの懸念も高まっており、欧・米・印では、太陽電池製造産業の再構築 に向けた動きが活発化している。米国のインフレ抑制法(IRA)やインドの生産連動型 インセンティブ(PLI)制度、EUの炭素国境調整措置(CBAM)の段階的導入方針など、 各国政府はエネルギー安全保障の確保と国内雇用創出、人権問題などへの対応のため、 貿易政策と太陽電池の国産化を積極的に進めている。

 

日本では、グリーンイノベーショ ン基金事業などの国の研究開発支援事業のほか、これまでの太陽電池や液晶、その他素 材などでの開発技術と製造ノウハウを活用した開発が進んでいる。ペロブスカイトをは じめとする次世代型太陽電池の出口戦略については、国内での自社生産の他、コア技術 を保有しながらの製品化と生産のライセンスビジネス、タンデム型での結晶シリコン太 陽電池メーカーとの協業、国外での工場展開、生産委託などが想定される。

 

太陽電池の利用拡大には図1に示すように、変換効率の高効率化や低コスト化等から エネルギーを追求する伝統的な技術開発(導入力)に加えて、今後は利用・導入サイド のニーズから利活用を追求する技術開発(展開力)も重要となる。開発の進む太陽電池 のタイプによって、用途、利用の棲み分けが図られるとともに、太陽光発電利用のすそ 野が広がっていくことが見込まれる。今後、建築・農業・自動車・航空・インフラ・通 信・民生品など他分野産業との技術融合によって、W単価だけで支配されない新たな市 1 – 1 場展開や、付加価値向上となることも重要な要素となる。市場(ニーズ)の多様化と太 陽電池の多様化が両輪となり、相乗効果を発揮することで、市場と事業が発展していく ことになろう。

 

PV module development trend

 

2020年代に入って「太陽電池」は様々な形で急速に進化・多様化しており、これから の世界に必要な持続可能な基幹エネルギー源として「太陽光発電」の将来は明るい。日 本においては、結晶シリコン太陽電池生産から撤退する企業が相次いでいるが、世界と 互していくためにも太陽電池技術開発の芽は絶やすことなく、太陽電池の技術開発と次 の産業展開を考え、太陽電池サプライチェーン再構築に向けた技術開発方針を示す時が 来ている。2030年に向けての太陽光発電の世界市場および日本市場は大量導入段階に入 り、大きく進化・進展していくことが見込まれているので、2050年をも視野に入れた長 期の技術開発戦略を、エネルギー追求の視点と利用追求の視点の両面から、さらにエネ ルギー政策に加えて産業政策の面からも練り直す必要があろう。日本の太陽電池技術開 発力が維持されている内に、これまで積み上げてきた技術や知見をベースに、若い世代 の力、デジタル技術を掛け合わせ、太陽光発電の次の成長につなげていかねばならない。

 

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