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株式会社 資源総合システム

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太陽光発電導入拡大に備えた一元的な情報管理体制整備を

2024.03.08

今日のFIT・FIP制度へ移行してからまもなく2年が経過する。この間太陽光発電導入展開は表1に示すように、旧FIT制度からは大きな変化を生じている。

 

FIT・FIP制度に基づく導入は、旧FIT制度下での未稼働案件の導入が主で、FIP制度による導入は低迷しており、限定的である。一方、第6次エネルギー基本計画策定及び改正地球温暖化対策推進法成立以降、太陽光発電導入拡大の推進は経済産業省だけでなく環境省、国土交通省、農林水産省にも広がったことで、所管する施策に基づく導入支援予算が新たな導入推進力になっている。経済産業省は、再エネ電力への転換を進める需要家が主導する太陽光発電への導入支援予算を強化している。環境省は、再エネ交付金の創設により自治体に対して、脱炭素先行地域づくりや再エネ設備導入加速化事業で、太陽光発電の導入を多年度にわたって補助していくことを可能とした。さらに、民間に対してはオンサイトPPA方式での自家消費型太陽光発電の導入補助分野を広げている。国土交通省は、空港分野における脱炭素化推進として、日本の空港敷地内及び空港施設への太陽光発電の導入を進めており、道路及び鉄道分野への導入も計画している。農林水産省は、農山漁村再生可能エネルギー法等に基づき、規模は大きくないが導入を支援している。地方自治体は環境省予算に頼るだけでなく、独自の予算でも太陽光発電導入を進める自治体も出てきている。

 

PV Market Development

 

太陽光発電事業者は、設置コストが下がってきたことで、導入者に対して導入資金不要のPPAという新たなビジネスモデルを提供できるようになり、FIT・FIP制度や導入補助金に依存しない自主導入にも力を入れ始めている。PPA方式では、設置した太陽光発電からの電力の使用量に応じた電気料金を導入者が発電事業者に支払うことで、導入資金調達を不要とし、PPA価格と現在の契約単価と比較することで、導入者の太陽光発電導入へのハードルを大きく下げることができる。発電事業者は導入者からの長期にわたる発電収入が見込まれる一方で、導入者は従来の化石燃料価格上昇による電気代高騰リスクと導入への資金調達から解放されるとともに、再エネ電力への転換を進め易くなるる。脱炭素経営に向けた企業価値向上と、レジリエンスの対応も図れることから、こうした相対取引による導入が新たな推進力になっている。この方式による導入は、太陽光発電を自社施設に設置するオンサイト型PPAから自社施設外で設置し、電気を自社に託送するオフサイト型PPAへと広がっており、今後の伸びが期待されている。

 

以上のケースは全て新規の導入であるが、旧FIT制度で導入された既存の太陽光発電に対して、変換効率等性能の高い太陽電池や軽量、両面発電等の機能の優れた太陽電池に交換して、太陽光発電所をリパワリングしていくケースが出てきている。こうした既存太陽光発電サイトでの追加導入は今後増えていくと見込まれている。

 

このように日本における今日の太陽光発電導入は、FIT・FIP制度や補助金を活用しつつ、自主導入も始まっており、いずれは自主導入が主体となって住宅用から公共・産業用、メガソーラーまで、市場の自立が実現することになろう。しかし、こうした自立に向けた多様な形での導入展開は太陽光発電導入量の把握を難しくしている。FIT・FIP制度に基づく導入量は運転開始報告で把握することができるが、関係府省庁からの補助金による導入は一部の公表にとどまり、制度や補助金を活用しない自主導入量は把握することはできない。太陽光発電の導入量の把握は導入目標量に対する進捗、精度の高い発電量予測と系統運用、日々の電力需給管理と長期の予測、地域共生に基づく地産地消と安全確保、関係府省庁の今後の施策展開に不可欠な基本情報である。同時に国内市場を形成する住宅、公共施設、民間施設、地上設置、農地活用、水上設置等の各市場の発展にも重要な基本情報となる。今後は自主導入だけでなく既存設備への追加導入、独立電源としての導入、さらに撤去による減少、中古パネルの再利用等、導入が複雑化していくことが予想される。主力電源化を担う太陽光発電については、年間導入量、累積導入量、実発電容量、設備稼働率、年間発電量などの基盤情報を把握できる、一元管理の仕組みを確立しておかねばならない。太陽光発電は分散電源として、再エネ電力への転換を進める電力需要家からの自主導入が加速していく前に、官民連携して導入をめぐる一元的な情報管理体制の整備を急ぐ必要がある。

 

 

 

「今月の視点」の英語版”RTS Monthly Perspective”は、こちらからご覧いただけます (英語版は日本語版の1~2週間後に反映されます)

The English version “RTS Monthly Perspective” can be found here. (English version will be released1~2weeks after the Japanese version)

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