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“栄農型”太陽光発電で、食とエネルギーの安定供給の両⽴を

2024.06.07

太陽光発電と農業の組み合わせを、日本では「営農型太陽光発電」あるいは「ソーラ ーシェアリング」と呼んでいるが、世界では農業太陽光発電(Agrivoltaics)と呼ばれて いる。農業太陽光発電は、農業・生物多様性・緑地といった複数の生態系サービスを提供しながら、発電機能も併設できる多機能性から、世界的に注目を集め、導入が進もうとしている。

 

世界各国における農業太陽光発電に対する認識は、エネルギー・食糧・環境の3つの安全保障の相乗効果を最大化し、さらに土地利用率向上や土地生産性向上といった様々な利点をもたらすものとみなされている。環境面以外でも、農業地域の持続 可能な開発を促進することで、雇用を創出し、地域社会の収入や税収を生み出し、農家 や土地所有者に多様な収入をもたらすことで、農村経済にとって有益なものとなる。このように農業太陽光発電は持続可能で豊かな未来の基盤たりうるとして重要視され、農業と発電の両立および最適化に向けた研究開発や実証、先行導入に対する支援も積極的に行われている。

 

特に欧州においては、欧州共通農業政策(CAP)の掲げる持続可能な農業の実践のための9つの目標(公正な収入、競争力強化、食料バリューチェーン、気候変動抑制、環境保護、景観と生物多様性、世代交代、活気ある農業地域づくり、食と健康の品質保障)を実現する重要ツールのひとつとして農業太陽光発電のプロジェクトが進行している。 独・フラウンホーファー太陽エネルギーシステム研究所では、農業太陽光発電の実証 プロジェクトについて今年4月に中間報告を行った。その中で、2年間の複数の実証研究 の結果、農地の上部に設置された太陽電池モジュールが農作物の収穫量増加に寄与したことや、灌漑水が50%削減されたり、農薬を70%節約できたという結果が報告された。 発電量についても、水の蒸発と裏面換気による冷却効果によって、想定より20%以上多 くの発電量が得られたとされている。太陽電池の設置形態についても、日射調整や霜害 防止にもなる角度調整可能型、農作物への光を均一化しながら発電も増大可能な太陽追 尾型、光量調整や光波長選択可能なハウス用半透明型といった新しい技術の実証や、最 適化のための農業・太陽光発電のモデリングツールも開発されている。

 

この他にもイタリア、フランス、オランダ、米国、韓国、台湾、インド等でも支援を 受けて体系的な研究開発が進められている。このような世界状況の中で日本は、ソーラ ーシェアリング/営農型太陽光発電に世界で最初に取り組みを始め、その導入数、多種 の農作物での実績が積み上げられている先進国と位置づけられている。 日本国内では、2013年に農林水産省による営農型太陽光発電の農地転用許可に関する 通知の発出以降、営農型太陽光発電の取り組みが始まり、その後も規制緩和や導入支援 により、導入が徐々に積み上げられ、農地転用許可実績等から営農型太陽光発電の累積 導入量は1GWを超えていると推測される。

 

これまで国内の営農型太陽光発電は、先進的に取り組む一農家による設置が多いこと、小規模(低圧)の営農型太陽光発電がFIT・FIP制度下で優遇されたことにより、小 規模発電所が数多く設置されてきた。しかし近年は、表1に示すように大企業も進出し、 これまでの”営農型”太陽光発電にとどまらず、農業・農村の発展につながる”栄農型”太陽光発電に進化を始めている。企業が農業法人を作って農地を集約して2,000kW以上の大型の営農型太陽光発電に取り組む事例、荒廃農地を農地に再生する事例、発電電力を FITで全量売電するのではなく、再エネ電力を必要とする需要家にオフサイトPPAで供 給する事例も増えている。さらには、スーパーやリゾートホテルを経営する企業が、営農型太陽光発電で作られた農作物と電力の両方を活用し、6次化農業と脱炭素経営の両 立を推進するという取り組みも始まっている。

 

5月には農政の憲法とも言われる「食料・農業・農村基本法」が改正された。食料安全保障を基本理念に据え、環境負荷低減・環境との調和、生産性向上、農村振興も盛り込まれた。これらの理念の下で太陽光発電も、これまでの”営農型”から”栄農型”へと移 行し、実績を積み上げることで、2030年までに太陽光発電が農業を栄えさせるものであ ることを示していく必要がある。2030年以降は農地への本格的な導入によって、農業・ 農地が、食料自給率を向上させる食の供給と同時に電力供給の担い手として農業の発展とエネルギーの安全保障の両立が可能となろう。太陽光発電の導入適地の減少が進む中、新たな適地として農地活用への道を拡げていくためには、農林水産省・経済産業省・ 環境省主導による連携した取組みが不可欠である。太陽光発電が次世代農業の必需品となって、農業と農村の活性化に貢献することを強く期待したい。

 

 

表1 大企業による営農型太陽光発電の新たな取組事例

Agri-Solar Cases

 

「今月の視点」の英語版”RTS Monthly Perspective”は、こちらからご覧いただけます (英語版は日本語版の1~2週間後に反映されます)

The English version “RTS Monthly Perspective” can be found here. (English version will be released1~2weeks after the Japanese version)

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