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ペロブスカイト太陽電池を巡る官⺠協議会の今後の展開に期待

2024.08.06

経済産業省は、政府による2040年を目標とする長期戦略「GX2040ビジョン」の策定 に連動して、5月より第6次エネルギー基本計画改定に向けての議論を進めている。同ビ ジョンは、①エネルギー、②GX産業立地、③GX産業構造、④GX市場創造を骨格として おり、①エネルギーの中に、第7次エネルギー基本計画案が反映される。

 

世界のエネルギー情勢は、ロシアによるウクライナ侵攻や、中東情勢の緊迫化などに よって、脱炭素に重点を置いた現基本計画策定時とは一変していることから、次期エネ ルギー基本計画は、目標年を現在の2030年から2035年、2040年に延ばして、エネルギー の脱炭素化の加速とエネルギー安全保障への対応を同時に強化するものとなる。現在、再生可能エネルギーの中で太陽光発電については、2030年度の導入目標量120GWに向けて、関係府省庁連携の下に導入拡大を進めているが、今回の見直しではさらに5年、 10年先の導入量が示されることになっている。

 

今後の国内の電力需要の見通しとして、データセンターや半導体工場の新増設等による産業部門の大幅増加が見込まれている ため、化石系発電源を大幅に減らす一方で、脱炭素電源への投資や供給力の抜本的強化 が必要となっている。主軸となる太陽光発電については、電源の脱炭素化を加速化していくためには、2030年以降の自立的な導入を本格化させ、現在の年間5GW規模から年間 10GWを超える規模の導入へとステップアップが求められる。そのためには、既存市場 に加えて新たな市場展開も不可欠となる。

 

現在、経済産業省は、結晶シリコン太陽電池では重量の関係で屋根等の分野での設置が困難であった場所を初め、導入領域が広がる 軽量・フレキシブルという特長を生かしたフィルム型ペロブスカイト太陽電池の開発を、GI基金を活用して進めている。この太陽電池を次世代型と位置付け、これまでのよ うな国の支援を技術開発にとどめず、量産技術の確立、生産体制整備、需要の創出に三位一体で取り組んでいる。さらに、このペロブスカイト太陽電池をベースとする、次世 代型太陽電池の導入拡大と産業競争力強化に向けて、図1に示すような学識経験者、供 給サイド、利活用サイド、利用者サイド、政府関係府省庁(経産省/国交省/環境省/防衛 省/文科省/農水省/総務省/金融庁)、都道府県、市町村、研究開発機関、金融サイドからなる官民協議会を立ち上げている。同協議会では、導入目標量・価格目標、国内サプライチェーンの構築、海外展開等を議論し、次世代型太陽電池戦略としてまとめ、第7次 エネルギー基本計画に反映させることになっている。技術開発から需要の創出に到るまで、行政サイドが産業政策として、供給サイドから利用者サイドまでを束ねて、新たな 市場創出に乗り出すことで、供給サイドに対する事業の予見性を高めることができ、国 内で再び太陽光発電を巡るサプライチェーンの形成を図ることができよう。この官民協 議会を単に戦略作りの場として終わらせることなく、次のステップとしてわが国の太陽 光発電導入目標量達成へのロードマップや、官民協議会のメンバーそれぞれの得意な領 域での役割分担を定めて、総力を挙げての導入拡大を進める官民普及促進協議会へと発 展させていこう。

 

PV Future Direction

図1 次世代太陽電池の事業化に向けた新たな展開

 

一方、世界では、太陽光発電システムは現在、蓄電池等の電力貯蔵コストが大幅に下 がってきたことで、電力貯蔵技術と融合し、系統への負担を大きく低減する24/7太陽光 発電システム(24時間・7日間)へと進化し始めようとしている。これまでの欠点であ った変動電源性や系統制約への克服が見えてきている。第7次エネルギー基本計画策定 に向けては、こうした次世代太陽電池の実用化や24/7太陽光発電システム等の今後の太 陽光発電の発展を充分考慮して、太陽光発電システムへの依存を深めていく導入目標量 の設定を期待したい。さらに、地上型太陽光発電システムとして導入拡大が見込める営 農型太陽光発電システムについても、前述の官民協議会を手本として、農林水産省、経 済産業省、環境省が中心となって、関係業界が参画する営農型太陽光発電システム官民 協議会を立ち上げ、農業と地域の発展を大前提とした食料とエネルギーの安全保障を両 立できる、営農型太陽光発電システムの導入展開への道筋をつけることもできるのでは なかろうか。

 

 

「今月の視点」の英語版”RTS Monthly Perspective”は、こちらからご覧いただけます (英語版は日本語版の1~2週間後に反映されます)

The English version “RTS Monthly Perspective” can be found here. (English version will be released1~2weeks after the Japanese version)

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