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太陽電池国際価格の大幅低下が進み、導入拡大は世界的に進行

2024.09.09

太陽電池モジュールの国際的なスポット価格は図1に示すように、安値傾向が継続している。2023年の世界の太陽電池モジュールの平均スポット価格は12米セント/W(以降、セントと記載)で、前年の23セント/Wから大きく下落した。2024年は、年初から4月までは10セント/W台を維持していたが、5月に10セントを割り、この7月末の価格は、182mmウエハー使用品が8.7セント/Wへ、210mmウエハー使用品は9.3セント/Wであった。N型結晶シリコン太陽電池モジュール(182mmウエハー使用品)の価格は、9米セントを切り、7月末には8.9米セント/Wに下落した。Price Changes

図1 太陽電池モジュールスポット価格の推移

出典:PVinsights(2020年1月2日~2024年7月17日発表)

 

スポット価格の低下の背景には、太陽電池サプライチェーン全般にわたって生産能力が過剰にあることである。図2に示すように、2023年末時点の生産能力は1TW/年となったが、生産能力の増強スピードのほうが太陽光発電市場の成長スピードよりも速いことを背景にして、在庫量が拡大して、市場では供給過剰の状態が継続している。

 

 

 

図2 世界における太陽光発電の導入量、太陽電池モジュールの生産量と生産能力(MW)

出典:~2022年:IEA PVPS Trends Report 2023、2023年:(株)資源総合システム

 

太陽電池国際価格の大幅低下が進み、導入拡大は世界的に進行 太陽電池モジュールの国際的なスポット価格は図1に示すように、安値傾向が継続している。2023年の世界の太陽電池モジュールの平均スポット価格は12米セント/W(以降、セントと記載)で、前年の23セント/Wから大きく下落した。2024年は、年初から4月までは10セント/W台を維持していたが、5月に10セントを割り、この7月末の価格は、182mmウエハー使用品が8.7セント/Wへ、210mmウエハー使用品は9.3セント/Wであった。N型結晶シリコン太陽電池モジュール(182mmウエハー使用品)の価格は、9米セントを切り、7月末には8.9米セント/Wに下落した。 スポット価格の低下の背景には、太陽電池サプライチェーン全般にわたって生産能力が過剰にあることである。図2に示すように、2023年末時点の生産能力は1TW/年となったが、生産能力の増強スピードのほうが太陽光発電市場の成長スピードよりも速いことを背景にして、在庫量が拡大して、市場では供給過剰の状態が継続している。

 

太陽電池モジュール製造企業の多くは、2024年上期決算で純損失を計上する見通しを発表している。中国では、「内巻」と呼ばれる業界内の激しすぎる競争によって産業全体が疲弊するリスクが指摘されており、企業の合併・統合を奨励し、企業の淘汰を進める動きもでている。こうした状況から中国国内においては、生産能力拡張の動きは減速しており、生産計画の中止や延期に関する発表も増えている。一方、米国及びインドでは、生産量に応じたインセンティブにより生産能力の拡大が進展している。欧州ではネットゼロ産業法により、太陽光発電導入の40%を域内から調達することが決定し、中東やオーストラリアにおいても太陽光発電のサプライチェーン構築が進もうとしている。このように世界全体では、生産体制の調整と強化が同時進行しており、需給ギャップの解消には時間がかかると見込まれる。世界的な需給ギャップの解消が進まない限り、太陽電池モジュール価格の安値傾向は当面続き、少なくとも2025年末までは現行ゾーンで推移していくものと考えられる。

 

太陽電池モジュール価格が低下したことで、各国政府は金利上昇による資金調達コストの増加、人件費の上昇があるものの、エネルギーセキュリティーの観点からも太陽光発電への電源シフトを強め、導入拡大が進行している。海外における2023年の電力事業用の初期投資コストは、米国をはじめとした主要市場で約0.7ドル/Wまで低下している。比較的大型の分散型太陽光発電システム(屋根設置)でも1ドル/Wとなっている。初期投資コストの低下に伴い、電力事業用発電コスト(LCOE)も2.9~9.2セント/kWhに低下(米・Lazard調べ)し、化石燃料及び原子力発電に対する競争力が一層高まっている。さらに、太陽光発電の進化は前述の経済性だけでなく、世界的には高効率化、長寿命化、モジュールサイズの標準化、ペロブスカイト型などの次世代型、蓄電池などの電力貯蔵技術が組み込まれた、24/7(24時間7日間)対応型などを初め、エネルギーとしての利用領域を広げる技術革新が多方面で進んでいる。

 

国内では、経済産業省は第7次エネルギー基本計画策定に向けて現状把握や発電コスト検証を進めている。2040年度に向けては太陽光発電が技術の高度化と融合により現在の諸課題を克服し、エネルギー源として大きな役割を担えることを見越して、カーボンニュートラルをけん引する、世界と互していく革新的な導入目標を打ち出すことを期待したい。

 

 

「今月の視点」の英語版”RTS Monthly Perspective”は、こちらからご覧いただけます (英語版は日本語版の1~2週間後に反映されます)

The English version “RTS Monthly Perspective” can be found here. (English version will be released1~2weeks after the Japanese version)

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