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1TW時代に向かう太陽光発電にも貢献する第7次エネ基に

2024.11.08

国際エネルギー機関(IEA)より2023年の太陽光発電に関する報告書「Trends in Photovoltaic Applications 2024」が発表された。同報告書は、太陽光発電の市場動向、政策動向、産業動向、社会や環境への貢献、価格動向など世界動向を包括的にまとめたものである。2023年には世界全体で456GWの太陽光発電が新規導入され、累積では1.6TWとなった。2022年の242GWと比較するとほぼ倍増であり、過去10年では最も高い伸びとなった。2024年の新規導入量は600GW規模が見込まれており、累積では2TWを超える電源に成長する。

 

世界における太陽光発電の年間導入量を、0.1GWを達成した1999年を基点にして振り返ると、表1に示すように導入拡大への推進力が見出され備わっていき、5年で1GW(2004年)、6年で10GW(2010年)、7年で100GW(2017年)の規模へと脱皮を繰り返しながら成長している。10倍の規模達成毎に経過年数は+1年伸びているので、1TWの達成にも当てはめると、それは最も早いケースで2017年から8年後の2025年となろう。

 

図1 世界における太陽光発電導入規模拡大への推進力

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0.1GW達成までに、1954年の太陽電池発明から45年を要している。1973年の第1次オイルショックを経験したことで、日米欧が中心となって石油代替エネルギー開発が始まり、太陽光発電もその一つに選ばれた。太陽光発電をめぐる技術開発は技術実証に進み、さらに補助金をベースとする初期市場開拓に発展していった。日本の住宅用太陽光発電に特化した導入補助金と、余剰電力購入は世界の導入拡大の推進力となって、1999年に0.1GW規模に成長した。

 

その後、日本の住宅用太陽光発電の導入拡大施策の継続、アメリカによる税額控除による導入推進、さらにドイツによるFIT制度の創設と買取価格の値上げによって、経済性を見いだせていない太陽光発電の導入を支え、2004年に1GWを達成した。その後FIT制度はヨーロッパ域内での採用が広がる一方で、中国・台湾による低価格の太陽電池供給が始まったことで太陽光発電のコストダウンも進み、2010年に年間10GW時代を迎えた。2010年代に入ると、中国による太陽電池大規模生産かつ大規模導入も始まり、大規模太陽光発電所による発電コストは、在来型電源並みの経済性を実現できるようになった。2015年のパリ協定の成立によって、これまでの一部の特定国による導入から、インドを初め世界中での導入も芽生え、2017年には100GWを突破した。年間100GW時代が始まると、世界各国による脱炭素政策としてメガソーラーを中心とする導入が進み始めた。世界規模での導入拡大への予見性が高まると、太陽電池の供給能力拡大への設備投資競争が進み、太陽電池の価格ダウンも加速することができた。

 

2000年代に入ると、太陽電池の高性能化や大型化が始まるとともに、入札やPPA方式による導入拡大へのビジネスモデルが広まり始め、太陽光発電は最安値電源としての経済優位性を高めていった。ロシアによるウクライナ侵攻に端を発したエネルギー情勢の急変は、エネルギーセキュリティの視点からも太陽光発電導入の重要性が加わり、世界は年間1TWの導入に向かって動き出している。一方、太陽光発電自体も蓄電池の低価格によって、系統への負担を軽減する蓄電機能を備えた太陽光発電システムへと高度化し、分散型電源としての活用領域が広がっていく。ペロブスカイト型のような新たなタイプの太陽電池の実用化によって導入領域を広げていくことも可能となっていく。

 

こうした中で、日本の年間導入量は2015年の10.8GWをピークに下降し、6~8GWレベルでの定量導入が続いており、最近は低下傾向もうかがえる。FIT制度を切り開いたドイツは、2012年の年間8.2GWの導入をピークに下降し低迷したが、2020年前後に回復に向かい、「再生可能エネルギー法2023」で定めた2030年215GWの導入を実現するための「太陽光発電戦略」を策定したことで、2023年にはかつてのピークを大幅に上回る15GWを導入し、見事に復活している。日本の太陽光発電導入は、FIT・FIP制度に加えて関係省庁の施策主導による導入が進み始めており、建物系市場、非建物系市場合わせて年間10GW以上の安定市場の形成が可能である。現在「第7次エネルギー基本計画」策定に向けての審議は、2040年に向けての電源構成の方向性を決定づける、国家目標を示すものとなるだけに、大事な局面を迎えている。今回設定する太陽光発電の導入目標量は、太陽光発電のこれからの発展性を十分織り込み、世界の太陽光発電導入展開にも貢献する、戦略的に高い目標を追求していくべきである。太陽光発電は今後もカーボンニュートラルを主導する主軸電源として、この機会を大きなチャンスとしなければならない。

 

「今月の視点」の英語版”RTS Monthly Perspective”は、こちらからご覧いただけます (英語版は日本語版の1~2週間後に反映されます)

The English version “RTS Monthly Perspective” can be found here. (English version will be released1~2weeks after the Japanese version)

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