2024年末に「GX2040ビジョン」及び同ビジョンの下に一体的に進める「地球温暖化対策計画」と「第7次エネルギー基本計画」の案がとりまとめられた。2025年はこれらを閣議決定し、新たな目標に向かう2020年代後半の幕開けとなる。
太陽光発電に関しては、2010年代はFIT制度の開始により、爆発的な導入拡大に成功し、建物市場及び非建物市場からなる今日の市場構造の基礎ができあがった。しかし、太陽光発電からの電力の全量売電による導入は、土地を利用して収益を上げていくこともできたため、国民負担の増加と無秩序な導入も進んでいった。2020年代前半は、こうした状況から健全な導入拡大を進めていくために、一つは市場統合へのFIP制度を初めとする新たな仕組みやルール作り、もう一つは取り締まりを含めた地域との共生を図る事業規律の厳格化の下に、自立した本格的導入へと転換するための事業環境整備の5年間となった。その結果、新規の事業認定量は激減し、年間導入量は旧FIT制度下での未稼働案件の稼働と、関係省庁による導入補助金に依存することとなり、ピーク時の 10GWDCから5GWDCの水準まで落ち込んでしまった。しかし、これから始まる2020年代 後半は、再び導入拡大に反転する5年になると見込まれる。それが第7次エネルギー基本計画案の2040年の電源見通しに示されている。各電源のバランスを重視する中で、太陽光発電の2040年導入目標量は表1に示すように、IEAが示す将来の電源像と同じように、容量においても発電量においてもトップ電源に位置付けている。
表1 第7次エネルギー基本計画案における2040年の電源構成(エネルギーミックス)
※ 2040年度容量は、第47回基本政策分科会資料を基に、第6次エネ基で採用された容量に基づ く発電量から換算(1kW当たり、太陽光1,244kWh、風力2,160kWh、水力1,930kWh、地熱 7,330kWh、バイオマス5,875kWh)
出典:第68回基本政策分科会を基に、㈱資源総合システム作成
太陽光発電が他電源と比較して別格の量となっているのは、太陽光発電のこれまでの 実績と今後の発展が評価されたことによるものであろう。2030年の電源シェア目標14~ 16%に対して、今回設定された2040年同目標は23~29%へと引き上げられており、ほぼ 倍増となっている。この電源シェアは発電量で2500億~3500億kWh、容量で200~ 280GWACに相当する。2030年の導入目標量120GWAC達成を前提にすると、2012年のFIT 制度開始以来、ほぼ20年間での導入量に匹敵する量を2030年からの10年間で導入することになる。2024年までの導入量を75GWACと想定すると、2025年から2040年までの15年 間で新たに125~205GWACの導入が必要となり、年間平均では毎年8~13GWACの導入が求められる。太陽電池に換算すると10~17GWDCに相当する。
こうした導入目標量の実現に向けては、同基本計画案では「屋根設置型太陽光発電」、「地上設置型太陽光発電」、「次世代型太陽電池の早期社会実装」を3本の柱として、導 入展開と市場形成を進めていくことが示されている。「屋根設置」に対しては、公共施設、民間施設、住宅をターゲットとしている。公共施設には2040年までに設置可能な建築物に100%導入する。民間施設には、ZEBや自家消費型太陽光発電の普及を目指して、 初期投資の早期回収や設置者の与信補完の観点からFIT・FIP制度の中で新たな支援に乗りだしていく。住宅では、2030年までに新築住宅への太陽光発電導入を6割に高める。「地上設置」では、自治体による再エネ促進区域設定を推進し、農地に対しては営農が見込まれない荒廃農地への導入を進めるとともに、営農地に対しては事業規律と営農の確保を条件に、営農型太陽光発電の導入拡大を進めていく。空港・道路・鉄道・港湾等 に対しては、これらのインフラ空間を活用した太陽光発電の導入を進める。さらに、オフサイトPPA方式の活用などによるFIT・FIP制度を利用しない地上設置の導入も推進していく。「次世代型太陽電池の早期社会実装」については、ペロブスカイト型太陽電池の技術開発を通じて、GW規模の国内生産体制整備と需要創出を一体的に進め、2040年までに20GWの導入を図っていく。
経済産業省、環境省、国土交通省、農林水産省等の太陽光発電導入拡大施策を担う関係省庁毎の導入目標量の設定はこれからとなるが、同時に実際に導入拡大を進めていくのは太陽光発電産業及び電力需要家群であるので、これら両者の立場にも立って、前述の市場毎の導入目標量もセットにして示していくことも重要である。太陽光発電産業は、脱炭素社会形成とエネルギーの安価・安定供給に向けて、日本の将来のトップ電源 を託された産業としての信頼と責任を担い、FIT制度開始以来の「第2期大量導入展開」を切り開いていこう。
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