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株式会社 資源総合システム

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第7次エネルギー基本計画から求められる太陽光発電の姿

2025.04.07

2024年度が終了し、2025年度が始まる。太陽光発電をめぐる2024年度の最大のハイライトは「第7次エネルギー基本計画(以下、第7次エネ基)」が閣議決定され、太陽光発電が2040年度の電源構成において2,530~3,480億kWh(全発電量の23~29%)を担うトップ電源に位置付けられたことであろう。これまで太陽光発電は2030年度の導入目標量120GW規模に向けた導入展開が進められてきたが、2025年度からは2030年度目標を通過点として、2040年に向けた導入加速を図る新たなフェーズに移行する。第7次エネ基の中での太陽光発電は、自家消費や地産地消を担う分散型リソースとして、地域との共生と国民負担の抑制を前提とする導入、建築物の屋根・壁面を有効活用する需給近接型の追求、次世代型太陽電池の国内サプライチェーン構築と産業競争力の強化という方針が示され、世界的な導入拡大の流れをにらみつつ、太陽光発電による電力の安定供給と、次世代太陽光発電産業の構築を目指すこととなった。

 

第7次エネ基では、①屋根設置型太陽光発電、②地上設置型太陽光発電、③次世代型太陽電池の社会実装を今後の導入展開の柱としており、関係省庁はこれら3分野に重点を置いた施策を推進していく。屋根設置型では公共部門、民間施設部門、住宅部門に分け、地上設置型では再生可能エネルギー促進区域設定を進めつつ、農地活用、インフラ空間活用、PPA/リース方式を活用したFIT・FIPによらない発電事業をターゲットとしていく。さらに、次世代型太陽電池の社会実装では、ペロブスカイト型太陽電池の持つ軽量・柔軟という特長を生かして新たな導入領域を開拓し、20GW規模の導入を目指していく。

 

前述の2040年度での太陽光発電による発電量2,530~3,480億kWhは、容量に換算すると200~280GWに相当する(第6次エネルギー基本計画における発電量と容量の原単位ベース)。2024年度までの太陽光発電累積導入量は75GW規模と推定すると、この容量を今後も維持するならば、2040年までに新たに125~205GWの導入が必要となる。こうしたことから、第7次エネ基から求められる太陽光発電の今後の展開は図1に示すように、政策面からは再生可能エネルギーがエネルギー政策の根幹へ移行し、産業政策、資源循環政策、地域経済策、税制、海外展開等と連動していくことが求められる。太陽光発電はこれまで主軸の再生可能エネルギーとして“量の展開”を図ってきたが、これからは“質+量の展開”への転換が必要となる。

 

今後の太陽光発電は「第7次エネルギー基本計画」と一体化している「地球温暖化対策計画」や「GX2040ビジョン」の基でも導入展開されることから、全省府庁及び全自治体と総力を挙げた対応で進んでいく。これまでは、経済産業省と環境省が、さらに国土交通省と農林水産省が施策面から導入への中心的役割を担ってきたが、今後は文教施設のZEB化を進める文部科学省を加えることも必要であろう。各省庁が所管する施策をベースとする導入目標量を設定し、複合省庁による施策、予算、法整備、規制改革、税制、標準化、技術開発を総動員した導入加速体制の抜本的強化なくして、民間からの導入拡大を広げていくことはできない。さらに、この規模の導入量の実現には、大規模な電力貯蔵(蓄電所/水素)とのカップリングと農地活用が必須である。電力貯蔵とのカップリングは、変動電源性や系統制約を克服し、安定電源化が可能となる。農地活用では、営農を大前提とする導入条件を整備することで、立地制約の解消に貢献する。

 

太陽光発電産業面からは、太陽光発電年間3000億kWh規模の安定供給を担うことになるので、太陽光発電の新設を中心とする現状の産業形態から脱皮して、O&M、電力サービスまで事業領域を広げた産業構造を持つ次世代エネルギー産業へと発展していかねばならない。その一方で、太陽光発電産業はペロブスカイト太陽電池だけでなく、結晶Siベースの太陽電池、パワコン、蓄電池、架台等のシステム全体にわたる安定調達のためのサプライチェーン確立を図ると共に、蓄電を含めた太陽光発電の徹底的なコストダウンも進めていかねばならない。電力需要家群に対しては、FIT・FIPに頼らないPPA方式など、ビジネスモデルを駆使することで電力需要地での自家消費型、地産地消型の太陽光発電の導入加速を主導していく必要がある。さらに、荒廃地および営農地での、“栄農型太陽光発電(太陽光発電活用型農業)”の推進などの新市場の創出・拡大展開も重要な柱となる。

 

2025年度は、官民共同で第7次エネ基で示された分野への導入加速を進める具体的な方策と行動計画を明確に打ち出し、2040年の導入目標達成に向けての「第2期導入展開」の幕を開けよう。

 

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図1 「第7次エネルギー基本計画」によって太陽光発電に求められる今後の対応

 

 

 

 

「今月の視点」の英語版”RTS Monthly Perspective”は、こちらからご覧いただけます (英語版は日本語版の1~2週間後に反映されます)

The English version “RTS Monthly Perspective” can be found here. (English version will be released1~2weeks after the Japanese version)

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