経済産業省より、2019年度の太陽光発電システムからの電力の買取価格14円/kWh(10~500kW)及び賦課金単価2.95円/kWhが決定し、2018年度が終わろうとしている。
今年度は、「第5次エネルギー基本計画」が閣議決定され、再生可能エネルギーを主力電源化していくことが決定された、エネルギー史上に残る画期的な年度となった。同計画の策定を受け「再生可能エネルギー大量導入・次世代電力ネットワーク小委員会」も再生可能エネルギーの主力電源化に向けた議論を展開し、①コストダウンの加速化とFITからの自立化、②長期安定的な事業運営の確保、③系統制約、④調整力、⑤産業競争力と技術革新の追求に関し、第2次中間整理を行った。しかし、ここでの議論は2030年のエネルギーミックスの確実な実現を目指すもので、国内での対応に限定されており、産業の世界展開の視点はカバーされていない。
太陽光発電の世界市場は、今や100GW規模となり、2020年代は200GW規模を目指して成長し、その中心は、人口も多く経済の発展途上にあるアジア地域と見込まれている。世界が低コスト化の進む再生可能エネルギーに対する投資を進める中、我が国も、2020年代には、集中型発電所として、また分散型発電システムとして世界中で利用が本格化していくこの太陽光発電市場に対して、産業界と政府が一体となって動き出す時期を迎えている。成長する世界市場への展開を進めている欧米や中国に後れを取らないためにも、早急に市場獲得の戦略とアクションプログラムが必要となっている。
電力事業の海外展開に関しては、官邸主導の経協インフラ戦略会議の中で「質の高いインフラ輸出拡大イニシアチブ」の一環として対応が進められており、経済産業省は第33回同会議(2017年10月)で、電力分野の海外展開戦略を発表している。その後、第36回同会議(2018年4月)では、海外エネルギーインフラの受注拡大に向けた対策として、再生可能エネルギーについては公的支援の拡大を挙げている。さらに、第41回同会議(2019年2月)では、再エネ等の成長分野や日本が強みを持つ分野において、経営参画も含めた取組強化、最適な企業連携、ソリューション機能の充実など、売り切りモデルから運用まで含めた継続的な関与を今後の方向性として打ち出している。このように政府の再生可能エネルギーの海外展開を重視する方向性は年々深まってきている。
太陽光発電をめぐる海外展開は、表1に示すように、環境省による途上国への温室効果ガス削減技術展開のための「二国間クレジット制度(JCM)資金支援事業」が中心的役割を担っている。このJCM事業を通じて、MWオーダーの大規模発電所の建設や日本が得意とする建物屋根への太陽光発電の設置実績が広がっている。日本にはFIT制度開始以来、規模、用途、設置場所、設置工法、系統運用等、多様な条件/環境に対応した技術と実績が既に存在しており、これを本格成長が始まる海外市場の獲得にも反映させていくべきである。
幸い、再生可能エネルギーの“主力電源化”がエネルギー基本計画で位置付けられて以来、電力、ガス、商社を初めとする在来型エネルギー産業が、続々と再生可能エネルギービジネスに参入してきており、我が国の太陽光発電産業も厚みを増してきている。参入企業の中には海外展開の実績もあり、これらの知見、経験、技術を太陽光発電にも活用できれば、海外展開を積極化することも可能となる。また、官民一体の支援体制により、太陽光発電システムだけでなく再生可能エネルギーの制度設計整備も含めた、相手国の立場に立った海外展開を進めることもできる。
世界の太陽光発電市場が拡大する今こそ、我が国が国内市場で築いてきた豊富な太陽光発電システムの導入実績と系統運用経験を、質の高いエネルギーインフラ技術の大きな柱一つとして、世界市場に羽ばたかせるチャンスであり、チャレンジでもある。太陽光発電システムの設置にとどまらず、運用をもパッケージとした質の高い技術で差別化し、今後の途上国支援のツールに位置付けることで、産業界の国際競争力を高め、民間の太陽光発電への投資意欲喚起を促すこともできる。太陽光発電産業界は政府と一体となって、国内市場に加えて2020年代の世界市場獲得に向けた輸出戦略や目標を打ち出し、今後の太陽光発電産業の発展と国際貢献に備えていこう。