わが国のエネルギー政策は、エネルギー供給強靱化法が成立したことに加えて、梶山経済産業大臣が掲げた「再生可能エネルギー経済創造プラン」により、将来を見据えて大きな見直しを始めることとなった。特に、再生可能エネルギーに関しては、その将来性への評価を高め、早期の主力電源化に大きく舵を切ることになった。
経済産業省は「エネルギー供給強靱化法」に基づき、再生可能エネルギーに関して新たな詳細設計を行う「再生可能エネルギー大量導入・次世代電力ネットワーク小委員会」と「再生可能エネルギー主力電源化制度改革小委員会」の合同会合を開催し、「再エネ型経済社会の創造に向けて」と題する再生可能エネルギーの普及拡大への第4フェーズ検討にあたっての、基本方針を発表した。同小委員会では、これまで再エネの導入拡大と課題克服に向けて取り組んできており、第3フェーズの報告書が今日のFIT法の抜本的見直しを主導し、「FIT法」を改め「再エネ促進法」へと衣替えの原動力となった。
今回の第4フェーズに向けた基本方針では、再エネの主力電源化からさらに一歩踏み込んで、“再エネを核とした経済”を創り上げるという新たな方向性が打ち出されており、①競争力ある再エネ産業への進化、②再エネを支えるNW等の社会インフラの整備、③再エネと共生する地域社会の構築--が大きな柱となっている。本稿の先月の視点では、「再生可能エネルギー立国を目指して」を提言したが、これから始まる「第6次エネルギー基本計画」の策定では、「再エネ型経済社会」の構築が骨格の一つとなり、エネルギーミックスにおける再生可能エネルギーに対する比率も、大幅に上方修正されることとなろう。
「再エネ型経済社会」のベースとなる「再生可能エネルギーの主力電源化」には、以下の3つの基幹化が不可欠である。第1は、再生可能エネルギー自身の基幹電源化で、技術開発などを通じた低コスト、大量かつ安定供給の実現で、これは蓄電に代表されるエネルギー貯蔵技術等と一体化により実現できる。第2は、エネルギー政策の柱の一つに再生可能エネルギーを位置付けることで、わが国では第5次エネルギー基本計画以来、再生可能エネルギーの主力電源化を目指している。第3は、再生可能エネルギー産業の基幹産業化で、産業政策面からのバックアップが重要となる。再エネ産業の基幹産業化を推し進めることで、先行する再エネ産業や在来型エネルギー産業、さらに金融業界からの投資が活発となり、産業面から主力電源化を支えていくことができる。今回の「再エネ型経済社会の創造」では、再生可能エネルギーを競争力ある産業に仕上げていくと位置付けたことが重要なポイントであり、これまでに欠如していた点にようやく焦点が当たる。
以上のような再エネ型経済社会の創造に向けては、実際にそれを事業として広げていく産業界の強い取り組みが絶対条件となる。太陽光発電は、水力、風力とともに今後の我が国の再エネ立国を支える重要な再生可能エネルギーである。太陽光発電産業を支える分野は、太陽光発電を供給する産業と太陽光発電を利活用する産業に大別される。前者は、日本はかつて世界一であったが、今は大きく後退し、世界との厳しい競争にさらされている。後者はこれから大きく伸びていく新たな産業領域である。太陽光発電の主力電源化は、これからが本格展開の幕開けを迎え、供給と利活を担う双方の連携による産業形成が基軸となる。両分野からなる太陽光発電産業界は、2020年代を大きなチャンスと捉え、産官一体となった基幹産業化を目指し、図1、図2に示すような事業展開を進めていくことを期待する。日本は再エネ型経済社会国家として、再び世界をリードしていこう。
図1 太陽光発電供給産業の事業展開
図2 太陽光発電利活用産業の事業展開