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太陽光発電、事業展開へのリスクを乗り越え、グリーン成長の要に

2021.06.08

改正地球温暖化対策推進法が成立し、2022年4月に施行される。5年ぶりの改正で、基本理念が追加され、「2050年までの脱炭素社会の実現」が明記された。自治体は「再生可能エネルギー促進区域」を設けて、再生可能エネルギーの導入拡大を図れる制度を創設し、地域活性化につなげていく。さらに、都道府県・政令市、中核市による温暖化対策実行計画に、再エネ導入目標量の設定が義務化(市町村は努力義務)された。改正法の施行によって、環境省による地方自治体主導の再エネ導入拡大が可能となり、再エネ事業者にとっては促進区域の仕組みによって、普及拡大への新たな道が開かれる。

 

一方、経済産業省では2050年カーボンニュートラルの実現、2030年温室効果ガス46%削減に向けて、現在第6次エネルギー基本計画策定への審議が終盤を迎えている。2050年の電源構成における再エネ比率:50~60%を想定して、2030年の再エネ導入目標量は、2707億~2903億kWh(25~27%)まで見込めているが、現時点では定量的な政策効果や実現可能性が明確でない政策は織り込んでおらず、更なる検討が必要としている。再生可能エネルギー5電源のうち、太陽光発電を除く4電源は、努力継続及び政策強化ケースがすでに提示されているが、太陽光発電に関しては87.6GWという努力継続ケースのみで、政策強化ケースは更なる検討を進めることとなっている。従って、太陽光発電が他の再エネ電源に比べて導入へのリードタイムが短いことを考慮し、関係省庁との連携・連帯を深めていくことを前提に考えると、2030年46%削減を実現するための2030年における太陽光発電導入目標量には、100GWを超す量が設定されることとなろう。

 

内閣府の再生可能エネルギー等に関する規制の総点検タスクフォースは、再エネの主力電源化と最大限の導入を目指し、経済産業省、環境省、農林水産省、国土交通省に対して普及拡大に向けた迅速な規制見直しを促しており、各省は規制緩和に動き始めている。この他、電力の大口需要家として、産業サイドからも菅首相による2050年カーボンニュートラル宣言以来、自社施設内への太陽光発電導入を進めるなど、再エネ電力を調達しようとする企業も続出している。金融サイドも気候変動リスク回避に動き、資金供給の立場から再エネ導入拡大を促している。

 

このように、政策面での再エネ導入目標量設定の拡大、産業の再エネ電源への転換拡大、金融サイドによる再エネ利用誘導などは、太陽光発電産業にとって今後の自立的発展に向けて歓迎すべき事業環境変化と捉えられる。これからは、2030年の温室効果ガス46%削減達成に向けた政策の総動員に加え、自治体による導入展開や設置場所拡大への規制緩和も始まり、太陽光発電の導入拡大はグリーン成長の要として新たなステージに立った展開に移ることとなろう。

これまで太陽光発電産業は、FIT制度に守られて60GW規模の導入を果たし、国際価格には及ばないものの、FIT開始当初と比較すると70%のコストダウンを実現してきたが、今後は、さらに、再エネ型経済社会の創造に向けた次世代エネルギー産業として飛躍的な発展が求められていく。しかし、100GWを超える導入に対しては、立地や電力貯蔵との一体化を初め、太陽光発電の技術のみでは克服できない課題領域に入るので、表1に示すように、太陽光発電事業展開へのリスク(課題)を乗り越える覚悟も必要である。

 

表1 太陽光発電事業展開への今後のリスク(課題)

 

市場面では太陽電池パネルを初め、太陽光発電システムコンポーネントに対する海外依存度が増しており、価格上昇と調達の不安定化のリスクが存在する。さらに、太陽光発電の成長に欠かせない蓄電池価格の低減が進まないと、導入拡大は限定的となる。政策面では、各府省庁が所管する土地利用、設置許認可、系統利用などの規制緩和が進もうとしているが、どこまで広がるかが不透明である。電力系統面では、系統制約や変動電源性の克服、調整電源不足による導入量抑制など、系統に関わる受け入れ限界のリスクが想定される。ユーザー面では、地域社会との共生の失敗、事故による安全・安心への信頼性低下、大型自然災害の発生など、ユーザーからの離反リスクが考えられる。このような今後の太陽光発電の発展を左右するリスクに対しては、太陽光発電産業だけで解決できるものではなく、政府を含め関係業界との連携を深めながら、太陽光発電事業展開へのリスク低減対応も怠ってはならない。太陽光発電は2050年カーボンニュートラルを主導していく、すでに確立された技術であるので、産官学金による総力戦で、供給面、需要面、行政面、技術面、金融面から100GWを超える導入に対する体制整備に、今から取り組んでいこう。

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